ステイトメント:「美しい山」〜Neue Nationale Musik〜

青いプティングに
シュガーパウダーの帽子

インダストリアル
煙 たなびく 街に

フニクリフニクラ
晴れた空に 朝日
美しい山
(「美しい山」歌詞より)

1.

 富士山をテーマにしたオリジナル・ソング「美しい山」を「歌碑」そして「MV」という形式で発表します。歌碑は刻まれた歌詞がそれぞれ異なる三種が各2個、合計6つが存在し、静岡県NOHARA BOOKS、六本木GALLERY MoMo Projects、六本木SuperDeluxe、赤坂 双子のライオン堂、広島READAN DEAT、神奈川パープルーム予備校に展示されます。MVは「美しい山」の基本となる「童謡」アレンジに加え、「New York City Mix」「Neue Nationale Musik」の3作品(3曲)をYoutubeにて公開します。

2.

 制作にあたり参照したのは明治時代の官僚「伊沢修二」の活動。伊沢はアメリカ留学中に「唱歌教育の導入」を文部省に提案し「和洋折衷の唱歌」を「国楽」として教育に組み込む形で日本に定着させた人物。教育者であり官僚であり、時に作曲も手がけています。明治11年(1878年)の文部省宛の上申書の言葉には「国楽トハ我国古今固有ノ詞歌曲調ノ善良ナルモノヲ尚研究シ、其ノ足ラザルハ西洋ニ取リ、日本ノ国民トシテ歌フベキ国唄」とあります。意訳すると「西洋音楽に学び、誰もが口ずさめる、日本のオリジナル・ソングを作ろう」。


3.

 「富士山展2.0」参加にあたり、伊沢が言う「国楽」こそ「富士山」という大きなテーマへの回答と考えました。ピアノによる演奏と作曲が僕の音楽活動の主たるものですが、最近では「ひらめき☆マンガ教室かいこう!」(2016)「パープルーム校歌」(2017)「ここで逢えたら〜常陸太田市郷土資料館〜」(2018)など、教育や芸術に関連した日本語によるシンプルな唱歌を制作しています。これらの唱歌は、学校や美術館に存在し、JASRAC登録されることも、販売されることもありません。レコード、CD、サブスクリクションへと発展した現在の音楽産業「以前」の音楽の在り方であり、これこそ「国楽」なのではないかと思い当たりました。

 

4.
 
 「美しい山」制作するにあっては、曲調は覚えやすくシンプルであること、歌詞は懐古趣味ではなく現在(2019年)の目線で「和洋折衷」「外国語を含む」ことを心がけました。また伊沢の提唱した「国楽」は政治性を持つため、児童向け唱歌アレンジで「童謡」を作る一方で、アメリカのダンス・ミュージック調「New York City Mix」、エレクトロニックで未来的な「Neue Natinale Musik(「新しい国楽」のドイツ語表記)」2つのバージョンを制作しました。ビートの強化は「其ノ足ラザルハ西洋ニ取リ」の実践の意味もあります。

5.

 以上の思考を経て、2019年新春、歌詞を刻んだ「歌碑」やYoutubeによって「美しい山」が共有された時点で、この作品は既に完成していると言えます。と同時に「富士山展2.0」はビットコインの礎をなすブロックチェーン技術によって芸術作品の所有の証明を発行する「Startbahn」の企画でもあるため、「美しい山」の「所有を証明」することも可能です。著作権や出版権の譲渡ではなく、ダウンロードコードでもなく、ブロックチェーンによって「この曲は、僕の、私のためのものである」ということを証明できます(註1)。

6.

 ともあれ、表現は思考や意図から自由です。新春の歌、富士山の歌、日本の歌の一つとして「美しい山」を口ずさんでいただければ幸いです。

(西島大介、新春)

 

註1:

ブロックチェーンでの「所有の証明」については詳しくは各展示ギャラリー担当者か、このサイトのメールフォームまでお問い合わせください。

参考資料

関連資料1:
竹中亨「伊沢修二における「国楽」と洋楽〜明治日本における洋楽需要の論理〜」
https://ci.nii.ac.jp/els/contents110004613787.pdf?id=ART0007323896

関連資料2:
ウールズィー・ジェレミ―「パープルーム大学附属ミュージアムのヘルスケア」展
https://bijutsutecho.com/magazine/review/18582

 

「美しい山」リンク集

01「美しい山(童謡)」MV
https://youtu.be/yC0sTVF1h5w
02「美しい山(New York City Mix)」MV
https://youtu.be/SUWHTO4Tz6E
03「美しい山(Neue Nationale Musik)」MV
https://youtu.be/3P2Hy4sOMsU

CM「美しい山」歌碑I,II,III
https://youtu.be/S3nTOreD6LI

 富士山展2.0
https://fujisanten.com/

富士山展2.0
https://fujisanten.com/


https://startbahn.org/daisuke_nishijima

概要
タイトル:富士山展2.0 -ザ・ジャイアントリープ-
日時:2019年1月5日(土)〜1月26日(土)参加期間/日時はそれぞれの会場で異なります
概要 :アート×ブロックチェーンの新サービス「startbahn」を使い、全国数十カ所で富士山をテーマにした展示を開催。『富士山展』は、多彩なクリエーターと会場の特徴や個性を活かしながら出展や企画を行うことのできる、自由度の高いプラットフォーム。日本で多く「描かれ/売買されて」きたであろう日本の象徴とも言える「富士山」に、様々なジャンルのクリエーターが、アート×ブロックチェーン「startbahn」と共に挑むことで、観客/クリエーター/コレクター/批評家等の参加者たちは「ポスト平成」のアート×テクノロジーを体験することでしょう。

ブロックチェーンによる作品の証明書アーティスト本人の証明書や富士山展の各会場における売買記録を作品に付与。証明書は来歴証明書も兼ね備えるため、作品の信頼度が流通に伴い高くなり、長く安心して流通させられる仕組みを提供します。富士山展ではブロックチェーン証明書を多くの方に体験していただけるよう、購入1作品目までは無料で発行できます(通常¥2,000- / ハッシュタグ「#fujisanten2」のタグのついた作品が対象)各会場の作品をweb上で「startbahn」の作品管理機能・売買機能を通して、富士山展2.0の全ての作品を閲覧・購入できます。

参加するアーティストにとっては売買だけでなくウェブ上の情報をポートフォリオとして活用頂くことで、全国の富士山展で新しいアートとの出会いを促進し、活発なアートの売買を実現していきます。